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第1話
6
.反省の日々――自分の欠点を知る 自分自身を知る
若い時から、私に会った人は、真面目な事を言っている人だと思っている人が多かった訳です。しかし、先程話しましたように、元来私は、そういうのと全然違う訳ですね。まぁ、学生でしたら、落第生ですね。今まで振り返ってみたら、「善い事ですね」という事はないんですね。
ところが、自分では、「私は甲斐性がある」と、そのように思っていた訳です。
高橋先生にお会いして、いろんな話をされた中に、そういうものが間違いであるということが分かった訳です。
「何が間違いなんだろう」と、そこから私は先生のお話を聴くようになった訳ですね。
先生のお話というのは、決して難しい事じゃないですね。最初の頃聴いていて、「ちょっと待てよ」と思ったんです。それは何故かと言いますと、最初お会いした時に、
「欠点を直しなさい。悪い処があるでしょう。あなた、こういう処が悪いですよ」
と、言われた訳です。言われて自分を振り返ってみたら、本当にそういう処があるんですね。しかし、まだ分からない。
私は、「人間というものは、其々いろんな欠点を持っている。その欠点を修正するというのは、これは容易な事じゃないな」と思った訳です。
しかし、容易ではないと、そう思っている事は、実は自分でその欠点を修正しよう、直そうという、そういう心が無いからなんですね。
ところが、自分では気が付かないですね。
「それじゃあ、自分でやらなくてはいけない。やるという事は何をやるのであろう?」と考えてみた。――先生は、「反省しなさい」と仰る。
先ず、自分で振り返ってみたら、何かこう、思い出なんですね――小さい時はこうで、こういう両親の元で生まれて、こういう環境で、こんな事をした――そればっかりが出て来る訳ですよ。
自分は、それが反省だとばかり思っていたんです。それで、こんなになって、自分は惨めな想いをしたとか、得意になったとか……。
で、それをやりながら、毎週先生の話をズーッと黙って聴いていったら、
「反省というものは、思い出しただけじゃダメなんですよ。その中で、その時に必ず相手もいる、物もある。そういうものに対して、自分の心の状態がどうだったか。
相手がいて、自分が話をした時に、その話し方によって、相手がどのように受け取っていたか。自分はどんな言葉を使ったか、どんな態度をしていたか――それをよーく振り返ってご覧なさい」
と、そう仰った。
今度はそれを振り返ったんですね。そうしたら、「あっ、私はこういう悪い処があった。相手の心を一つも汲み取らずに、自分勝手に言葉を出していた。あの人は、本当にイヤな想いをしただろうなぁ」――そういう事ですね。
そうすると今度は、この厭な想いをさせた自分の欠点というものが、今度は自分の生活の中で、今、一体どうなっているのかをみてみる。
例えば、一五歳の時にいろんな事をした。やった事や、その心の状態が、今の五〇歳になっている自分には全然出て来ないような気がするけれども、本当に無いのだろうか――。
ところが、よく追求すると、あるわあるわこれがあるんですね。それに気が付かない。気が付かないということは、人間というものは、自分本位なんですね。何でも自分本位なんですよ。人の事なんか構っちゃいられないですね。自分さえ良ければいいという、そういう気持ちがあるから、それが分からないんですよ。
人の身になって全然考えていない、自分が全部善いと思っている訳ですよ。
私達は、反省をしても、その辺のじぶんというものがあったら、分からないんですよ。やはり、人の身にもなってご覧なさい。――そういう事ですね。
例えば、「自分はこういう事を話したけれども、それを相手の人が受け取ったらどんなふうになるだろう」と、そのくらいの事は、思えない事はないと思うんですね。
そして今度は、そういう事を毎日振り返ってみる。一日が終わる時に、「私はこの前、これを修正しようと思っていたけれど、今日一日の中で、それがちゃんと出来ていたかな、いなかったかな」と振り返ってご覧なさい。
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