第一話 『人間とは何ぞや』関連の参考講話 短編集
8、胎児は知っている――次元が違う母親の体内
(32ページ『反省の日々』参照)
先生にお会いしてから、私は二年目になっていたんですね。その頃は、施設を回りながら、先生が仰っている、自分の反省というものを続けていったんです。
とにかく、やり始めたら徹底的にやろうと、幼い時から現在に至るまで、微に入り細にわたって反省をしていったんですね。
その反省の中で、実は未だに強烈に残っている事があるんです。幼い時の三歳位までは思い出すのですが、一歳~二歳までの事がどうしても思い出せない。それを一所懸命に分かろう分かろうと、いろんな方法で突っ込んでいった。
そうしたら或る時に、眼を閉じて反省をしていたら、お腹の中にいる赤ん坊の姿が(心の眼で)観えた訳ですよ。一言で観えると言っても、これは変ですけれどもね、お腹に入って逆さになった赤ん坊が出て来て「これは、一体何だろうな? これは錯覚じゃないかな」と思って、眼を開く。また静かに眼を瞑ると、また出て来る。――実は、これは自分が母親のお腹の中にいる時の姿だったんですね。その時には、吃驚してしまいましたねぇ。
これは最近、私が他所で話をした時に、お腹の大きい人に「光を入れてください」と言われて、光を入れたことがあるんですね。ズーッと光を入れて暫くしたら、その中から声が聴こえてきた。「あれ、何か言ってるな」と思った訳ですよ。そして、よーく聴いてみると、実はお腹の中の赤ん坊が、
「親が喋っている事、行っている事、全部分かります」
と言うんです。これには私も吃驚しましたねぇ。そして、そのお腹の子が、
「親以外の人の一挙手一投足も、みんな分かります」
と、言うんですよ。これにはドキンですね。へッと思いましたよ。
そしてそのお腹の子供が言っている事を親に尋ねてみたら、本当にその通りなんですね。無い事は言いませんよね。
これは以前にも、悪阻が酷いご婦人に光を入れた事があるんですけれども、夫婦で私の処に訪ねてみえた。ご主人が、
「先生、家の奴は七ヶ月にもなるのに、悪阻が酷くて大変なんですよ。どうしてなんでしょうか?」
――悪阻というのは、食べ物が合わないとか、以前に生まれた国の食事と、今回、日本に初めて出て来て、例えば、肉食が合わないとか、野菜食が合わない場合とか、母親との考え方が違うとか、そういうもので出て来る訳です。
悪阻というのは、本当はお腹に光を入れたら良くなるんですが、この人の場合は普通と違って強烈なんですね。
「奥さん、横になってご覧なさい」
私は、お腹に光を入れながら、お腹の中の子に聞いてみた、
「あなたは、おかあさんの意識と不都合を起こして、悪阻が酷いそうだけれども、一体どうしたというの?」
「わたしは七ヶ月目になるんですけど、実は、わたしの両親になる人達は、わたしが生まれる事を祝福してくれません。ですから、心の中が穏やかではありません」
そう言うんですね。
「お宅らは、お腹の赤ん坊が、『二人が、生まれて来る事を喜んでくれない』と言っているけれど、夫婦でそんな事を言っていたの?」
「ええっ?」
二人とも顔色がサッと変わってしまった。
「なんだ、言っているんだね」
「……はあ、実はそうなんです。お腹が大きくなるまで堕ろそうか、どうしようかと言ってました」
「お腹の赤ん坊がそう言ってるよ」
「ええっ!」
その赤ん坊が、もう一つ言った、
「わたしより先に出た、姉に対しても、二人は同じ事を言っておりました」
「あなた達は、先に生まれた子供にも同じ事を言ったでしょうが――」
「ええっ……はい、すみません。でも先生……何故そんな事が分かるのですか」(笑)
「お腹の子が全部話してくれるんだよ」
「ええっ!」
て、もうこの二人、驚いてばっかり――。(笑)
そしてこういう話もありますね。妊娠中のお母さんの子宮の中の音を録音した。そしてこの赤ちゃんが生まれた。赤ちゃんが泣く時に、その録音した音を聴かせたところ、ピタッと泣き止んだ。
その音は、川の流れのようなザーッという音。これは血液の流れの音なんですね。この音に安心して泣き止んでしまう。
そうすると、その録音の中に、お母さんの声と相手の声も全部入っている訳ですよ。赤ん坊は、お腹の中で喋っている事を全部聴いていますよ。
私はその録音の話を聴いた時に「あ、私がお腹の子とやり取りする事を証明してくれたな」と、そう思ったんですね。
そうすると、不思議でも何でもないんですよ。我々は眼に見えないから、不思議だと言うだけですね。――不思議じゃないんですよ。
実は、お母さんのこのお腹の中というのは、我々と次元が違う訳です。四次元以降の世界なんですよ。コンタクトしてから生まれて来るまでは、胎児の状態の時は大人なんですね。魂なんです。ですから、妊娠中の両親の心の状態というのは大事ですね。
ところが、生まれて外に出たら分からなくなってしまう。人間は五官(眼・耳・鼻・舌・身)を通すと、分からなくなる。これは、そういうふうに出来ているんですね。
これは到底、人間の力ではこんな事は出来ないですね。――それが私達なんです。
一人一人の肉体を持っている私達です。
それだけ、素晴らしいものをみんなが持っているんですよ。
1984年3月