第一話 『人間とは何ぞや』関連の参考講話 短編集
19、森林と海と酸素の関係
(148ページ『身を滅ぼす文明』参照)
今の日本中をズーッと見ていくと、近海の魚が段々いなくなってきているんです
ね。海流が変わって、魚が何処かに行ってしまうんですね……と、思いきや、そうじゃないですね。
今、岬だとか、海岸べりにズーッと道路や観光道路が出来ますね。森林の中に道を通す。そうしたら、その為に木を伐採していくんですよ。
いいですか、そうすると、魚がいなくなってしまう。まあ、こんな事を言うと、
「それとこれと、何の関係があるんですか? 木と魚が何の関係があるんですか?」
と人は言うでしょう。――これは、大いにありますね。
例えば、海岸べりの森林を開発して道路を造りますね。森林というのは、雨が降ったら土に染み込む。木というのは根があって、ザーッと水を吸いますよね。
いいですか、そして土に染みこんだ残りの水は、今度はズーッと土の下を通って海の方へと染み出す。
そこで、この雨水と潮水が混ざり合って、丁度良い濃度の処で、近海の魚は産卵するようになっているんですよ。そういうふうになっているんです。
ですから、道路を造ると海にザーッと雨水が流れ込んでしまう。そうすると、魚の
産卵場所が無くなってしまう。
それから、今何処でも山の中に道路を造って、アスファルトで固めてしまいますね。そうしたら、どうなるんでしょう? ――これは、道路を挟んで両側の森林は全然別のものになってしまうんですよ。動物も昆虫も、鳥までも往き来が出来なくなってくる。木も、道路を挟んで、右と左が全然違うものになる。
森林も生き物も、全てが共同体なんですよ。全部、関連している訳ですね。
ところが、そんな事は、お構いなしに道路を造っていく。
こういう事を、気が付かない役人の人がいたら、教えてあげれば良いですよ。
みんな、この自然のものを別々に考えている。こんな事、誰も知らない。みんな段々分からなくなってきますね。こういう事、分からないですよ。考えないですよ。
ということは、人間が自然に対して、奢り過ぎだということですよ。
空気中の酸素は21%ですね。この21%の酸素の三分の一は、大体、南方の熱帯雨林から出ている訳です。
ところが、その三分の一というその密林を、実は今、半分位切ってしまっている訳です。
切ったら何処へ持っていくんでしょうか? ――その70%が日本が使っているんですって――。彼等は、日本人の事を木食い虫と言っていますよ。(笑)
何にそんなに使うんでしょうか? ――家が、ビルが必要だから……と、もう日本人は、そんな事も分からないですね。
皆さん知っているように、アマゾンの方では、どんどん原生林を壊して畑を作る。あの辺の人は、街にいても職が無いから「あんた、あっちに行って開墾しなさい」と言われて政府でやらせる。
「まだまだ大丈夫だから、開墾しなさい」と畑を作るでしょう。二、三回植えて、土が駄目になったら、今度は他の土地の木を切って、またそこに畑を作る。切った後は、木を植えない。こんな太い木を切って、その後に苗を植えたとしても、一年や二年じゃ、木は大きくならないですよ。
毎年、物凄い量の森林が、この地球上から無くなっているんですよ。
酸素の事もみんな分からないんじゃないでしょうか。ですから空気中の酸素の量が偏ってくる。酸素は多くても少なくても、人間は息がつけなくなってくる。
それじゃ、どうやってこれを保っているんですか? ――人間が二酸化炭素を出して、それを木が吸う。そして、木が酸素を出してくれる。しかしこのままでは、何時までも、この21%というのを保つ事が出来ないんですね。多くなったり、少なくなったりする。
そうしたら、どうなりますか? ――そうしたら、生き物は全部駄目になる。
そうしたら、どうするんですか? ――実は、この海の水が、何時もこの21%という地球上の酸素の量を調整しているんですね。調和しているんですよ。自然界というものは、全部繋がっているんですよ。
いいですか、私達はそういう事を分からなければ駄目だということですよ。
今の文明に振り回されて、みんながこういう肝心な事を忘れていってしまう。
これじゃ、人間どうなるんですか? ――こんな事を言ったら「どうかなったとしても、私はもうその頃は、この世にいないからいいや」と思うけれども、次に直ぐ、またこの世に出て来るんですよ、自分の魂のグループの人が――。
グループであっても、自分なんですよ。――これがまた、みんな分からないですね。
私達は、一人でも良いですから、こういう事を知って、やはり自分というものを、どのようにしていったらよいか――。「私一人でも良いからやろう」という人が出て来なかったら、絶対におかしくなりますよ。そんなに時間が経たないうちにおかしくなりますよ。こういう事を仏さんが出て来られて、
「こうなったら、こうなりますよ」
と話していかれた訳です。これから先どうなるか、ちゃんと分かっているんですね。
私達は、そういう中を永遠に生かされている。生きているんじゃないんですよ。生かされているんですよ。
1989年5月