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第1話
2007.4.3
更新
13、
執着の果て――初めてお化けと遭遇
私が初めてお化けに出会ったのは、高橋先生の仕事を手伝うようになった時です。
私はね、元々物凄く鈍感なんですね。感度が鈍いんですよ。人が、アッと思うような事でも、それから暫くしてから、「何かあったんですか?」なんて調子なんです。
まぁ、お化けなんてものは、あまり見ない方がいゝですけれども、高橋先生がお元気な頃、長野県の志賀高原で研修会があった時のことです。
その日の日程が終わって夜寝た。そうしたら夜中に、私の隣に寝てる人が、フッと起き上がる訳です。そしてまた、スッと寝る訳ですよ。まぁ、夢遊病者みたいに何回もやる訳です。
私は、「この人どうしたのかな?」と、薄目を開けたんですけれども、何かこう「これは只事じゃない」と感じた訳ですよ。私は臆病ですからね、厭ですからもう……布団被って寝ちゃった訳ですよ。(笑)
そしたら次の朝になって、その隣にいらした先生が、
「朽木さん、何で起きてくれなかったの? 布団の中から、こっち見てたじゃないの」「どうしたんですか、先生……」
――お化けだった訳ですよ。私と、隣の人の間にお化けが立っていた訳です。その前の方にも、他に三人も四人もいたんですよ。
私は幸い臆病ですから布団被ってましたけど、隣の人は寝られなかったそうです。
まぁ、それが私が最初に観たお化けなんですね。だけど、私はそれをもろに観た訳じゃない。しかしそれから後、いろんな事に遭うようになったんですね。
これは、高橋先生と講演の旅行をしている時に、京都にある大きな割烹旅館に泊めて貰った時の事ですが、高橋先生は、本館の前に庭があって、砂利がズーッと敷いてある奥の離れの部屋に、お一人で寝ておられた。
夜中になって、先生が私達の部屋にみえて、
「悪いけど、誰か私の部屋の方で、一緒に寝て貰えませんか」
と仰ったんです。「あ、何かお化けでもいるのでは」と思ったんですよ。
「先生、どうされましたか」
「いやね、実は寝られなくて困っているんですよ」
ところが、他にいた三人の人は、みんな話も聴かないで布団を被って寝てしまったんですよ。(笑)後は私だけなんですね。折角そうやって来られたんだし、私が年長でしたし、霊的なものも鈍感ですから、
「先生、私が行きますよ」
と、ご一緒したんです。
そして、離れの敷居に足を踏み入れようとした途端、「あっ! これはいけない」と、もうそこで分かったんですね。「これは、いるな」と思いましたよ。先生が、
「私は鼾をかくから、互い違いに寝ましょうや」
と仰って寝た。もう夜中の一時過ぎ……と、暫くしたら、パラパラ……って音がするんですよ。「あれーっ?」と思った。ここは日本家屋で、障子が廊下の方にズーッとあるんですよ。風も何も無い。風ではなくて、実は障子の桟を擦る音なんですね。
そのうちに、バタバタ……と大きな音になった。
今度は足音がして、「まてーっ!」っと、自分が言われているのかなと思うくらい、はっきり聴こえてくるんですね。「あ、これはいけない」とそう思いましたよ。(笑)
それでも、「先生がいらっしゃるから、まぁいゝか」と布団被って寝たんですね。
その後、夜中に、ふと先生の方を見てみると、寝られなくて起きていらっしゃるんです。そして、そのお化け達に一所懸命に話をしている訳ですよ。
「あなた達はね、こんな処にいても、救われないですよ……執着を捨てるんですよ」と仰っているんですね。
その人達はみんな明治維新の時の人達ですね。死んだ事も気が付かずに、未だにチャンバラをやっている人達がいるんですよ、そのままの状態で――。
やられたら、「やったな!」と何年も何年も争いを繰り返している。
京都という処は、大昔から都ですから、あの中で人を殺したり、殺されたり、ガタガタ……やっている処なんですね。
そんな事を言ったら、京都の旅館に泊まれなくなってしまいますけど、本当にそういう事があるんですよ。皆さん分からないから、平気で泊まっているだけであってね。
私は元々臆病なんですよ。その辺で、カタンと音がしただけで、ワーッ! と(笑)、吃驚して飛び上がるくらいなんです。最初は厭でしたよ。
しかし、お化けは、ただ出て来るだけですから、別にどうという事はないですね。逃げる必要も無い。住んでいる場所=世界が違うんですから――。
ただ違う処から、観ているだけ、感じるだけです。
これは、お化けが怖いということではなくて、今、肉体を持っている私達も、実は何れ終わって行く訳ですよ。自分がそういうお化けにならないようにと、そのお化けが姿を見せてくれているんですね。
「あんた、わたしみたいになりなさんなよ」とそう教えているんじゃないでしょうか。
そうなったら、大変ですから、もっと楽しい事を考えて、心を明るくして毎日を過ごしましょうということですね。
そうすると、こういう現象は何故起きるのか? ――やはり、それだけ念というものが残っている訳なんです。念なんですね。念=想い。
人間というものは、生きている時には、集団があると、集まった人はその中で少しでも人のやっていないような、格好の良い事、みんなの目に付く事、それでまた、みんなよりも何か自分は分かりたいとか、霊的な力を持ちたいとか、そういう考えを持つ訳です。
組織みたいなものが出来てきて、その中に入っていくと、尚更それが激しくなっていく訳ですね。
それは宗教というものにしてもそうですね。その組織の中で、少しでも人より良くなろうという心を持ってしまう。使いようによってはいゝかもしれませんけれどもね。
人間というものは、どうしても、人を蹴落としてやろうとか、沢山集まった人を利用して、金を儲けようと考える。それから、
一、自分の暮らしが良くなりたい。
一、家族の不調和を、調和したい。
一、病気をしているので、何とか治したい。
一、家庭の中は、子供と上手くいかないんだけれども、何とかならないだろうか。
一、良い学校に入りたい。
一、良い人と結婚したい。
――こういうような事を考える。
中には、選挙で当選したいという人もいる。これはこの前、私の処に相談に来た、或る議員さんがいるんですね。
――次回に続く。
次回『14、ある政治家の相談』『15、縁とは約束事』の更新予定は、4月中旬です。 どうぞお楽しみに。
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文 / 朽木丈人
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