心の旅路

第1話                                  2007.6.30更新

  25、身を滅ぼす文明――自分の回りの知らない事


それこそ、土もそうですね。地・水・火・風・空という、我々が生活していけるものを全部提供してくれている訳です。地・水・火・風・空――これは神が提供してくれているんですね。この全てのものが無かったら生きていけないんですよ。
これは天台智顗(五〇〇年代/中国・天台山)と言われる方が、みんなに話をした。
「我々は、こういうものの中にいるんですよ。こういうものは大事にしなければいけない」
と、教えられた訳ですね。
ところが、この地ひとつ見ても、今はどのようになっているんでしょうか? 
田舎へ行けば田圃がある。田植えをする。青田刈りなんて変な事やってる処がある。あれはね、赤ん坊を造って堕ろして水子にしたのと同じ事ですよ。それと何等変わらないですよ。
それじゃ、何故植えるの? ――これが国のやる事ですね。「刈れ」と言われても、本当はやらなきゃいゝんですよ。それこそ、蕎麦でも植えて育てた方が良いですよ。本当に無駄な事をやっているんですね、日本人というのは――。
「農耕をする人がいなくなる国は滅びる」
と、昔から言ってますよね。日本がそうじゃないですか。日本人は元々農耕民族でしょう。お百姓をやる人がいなくなってきた。段々段々機械でやるようになった。若い人はお勤めする。お勤めしたら、もう農家は出来ないですよ。
確かに便利になったけれども、青田刈りなんてやってる以上は、何時かは、その反作用が起きてきますね。
今は何とも無いかもしれない。しかし、何時無くなるか分からないですよ。
物が有るという事は無くなる前兆です。――そうですね。
これは、もう地方によっては、稲を植えても実が持たない処がある。実がならない。幾らやっても育たない。これはおかしいということで、田圃を掘ってみた。土がもう、全然駄目なんですよ。
そうすると今度は、土を全部入れ替えする。山を崩して土を持って来る。山が無くなってしまう。ついでに田圃も無くなってしまう、家を建てていきますからね。
今度は雨が降ってきた。大水になった。洪水になって、家が水に浸かった、流された。――「行政が悪い」と、こうなってくる訳ですね。
田圃とか山というのは、雨が降ったらちゃんとそこで押さえるようになっている訳ですよ。雨が降る、雨が降ったら、山の林の木や土が水を吸収する。そして、それを谷川に徐々に流すようになっている訳です。
田圃は田圃で、雨が降って来たら、田圃に溜めて、水が一気に出ないように止めてくれる。そういうふうになっている訳です。――そうでしょう。
川や湖水のヘドロは、ヨシ=葦が吸う。その中に大きい貝がいて、それがヘドロを食べる。そして綺麗になっていた訳ですよ。
それをドンドン埋めていくから、葦も無い、貝もいなくなる、田圃がない、山には木が無くなる。いろんな処をセメントやアスファルトで固める。当然、水はザーッと一気に流れる。勢いが強いから、何処かが流される。――そうですね。
そうしたら、この頃、雨が降ったりして洪水やいろんな事が起きるということは、どういう事でしょう? ――先程の地滑りと一緒、みんな人災なんですね、実は――。天災なんか無いんですよ。全部、人災なんです。
そういう事を、やはり我々は知らなければいけないんですよ。
そして、稲が育たないから、今度は土を掘ってみた。匂いを嗅いだら土の匂いがしない。ドブ臭い。ドブ臭いんですよ――。
土の中には微生物がいる。調べてみたら微生物もいない。勿論、蚯蚓なんかいない訳です。蚯蚓のこんな小さいのは一杯いた。こういうのは、魚釣りに丁度良いですね。蚯蚓のこんな小さいのは役に立ちませんよ。無論、大きな蚯蚓なんかいない訳ですよ。
みんな、蚯蚓を見たら、「ウワーッ、気持ち悪い」と言う。蚯蚓は、私達にどれだけ貢献してるでしょうか……分からないですね? ――蚯蚓は、沢山いればいる程、土地は軟らかくなっていくんですね。蚯蚓が糞を出して、軟らかくなってくるんです。
そして、蚯蚓があっちこっち這い回るでしょう。あれは、実は土の中に酸素を供給しているんですよ。蚯蚓がいなくなると、酸素を供給出来ないから腐ってくる訳です。
ですから、幾ら稲を植えても実がならない訳ですよ。――そうじゃないでしょうか。
こんな事に、みんな気が付いているでしょうか。私達は自然というものに対し、どんな事を考えているんでしょうか。――そうですね。
それで今度は、蚯蚓が必要だということで、アメリカから蚯蚓を輸入した。アメリカからですよ。日本は蚯蚓まで買ってるんですよ、アメリカから――。(笑)
ところがアメリカの方では、日本が何にも買わないなんて言っている訳ですよ。ですから、言ってやればいゝんですよ、「あなた達の処から蚯蚓まで買ってるんだよ」って――。(笑)阿呆な事を言われて、ウロチョロ、ウロチョロしてしまってね。
輸入して今度は、蚯蚓を田圃の中に撒くのかと思ったらそうじゃない。蚯蚓をある一定の処で飼って、蚯蚓の糞を取って撒いて歩くという、おかしな事をやってる。放せばいゝのにと思うけれども、ところが値段が高いから、放せないんじゃないでしょうかね、あれは――。
そのくらい、農家をやっている人達でさえ、ここまでいってる訳ですよ。そんな事を知らない人だったら、土がどんな状態かなんて全然考えないですよ。
それでどんどん……アスファルトやセメントで土を覆ってしまう訳でしょう。土は息をしてるんですよ。息をしてるのに、みんな蓋をする訳ですよ。
で、蓋をされるから、何処からか出さなくてはならなくなる。桜島バーン!ね。阿蘇山バーン!。(笑)これは、やはり何処かで息をしなくてはいけない訳でしょう。溜まったエネルギーを放出しなければいけなくなる訳ですね。
「そんな事を言っていたら、何も出来ませんよ」って言うかもしれないけども、私達は、そういうものが文明だと思っては本当はいけないですね。
私達は、自然というものがあって、生かされている訳ですよ。
自然というものに対しての自分、そして、人間というものを考えた時に、やはりもっと自分の身の回りの事が、本当に分からなくてはいけない。いろんなものに気が付かなかったり、知らない事も沢山ある。
また、自分は知らないと言いながら、とんでもない事をやっていることが沢山あるんじゃないでしょうか。こういうもの一つさえ分からなければ、心の世界と言っても中々受け取ってはくれないですね。
私はいろんな処に行って、話をさせて貰うんですけれどもね、心の中では、「皆さん、分かってください、分かってくださいよ」と、思いながら話をしてるんですけれども、先ずそういう自分の身の回りの事を、よーくご覧なさい。

――次回に続く
次回『26、便利と人任せの現代――自力で掴む幸せ』の小見出し公開予定は、7月の第1週目です。どうぞお楽しみに。


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