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第1話
2007.7.7更新
26、
便利と人任せの現代――自力で掴む幸せ
何時も言いますように、「高橋先生の話を聴きなさい」、「高橋先生の本を読みなさい」、「高橋先生は偉い人ですよ」と、私は宣伝している訳じゃないですよ。高橋信次先生の仰った事、本に書いてある事は、本当に素晴らしい事なんですよ。
「それを皆さんやってみたら如何ですか――。私がやってみたらこんなになりましたよ」って、ただ言ってるだけですね。私は、みんな分かっている訳じゃない。何でもかんでも分かったとしたら大変ですよ。
皆さん、私の処にね、いろんな事を聞きにいらっしゃるけれど、私は分からないですよ。私は占いでも、何でもないですからね。間違ってはいけませんよ。私が何でもかんでも分かったら、こんな事していませんよ。もうサヨナラしてますよ。――しかし、そうはいかないですね。
しかし、多少は分かるかもしれない。私の話を聴いた人が、私の話を参考にして、幸せになって貰ったらそれで良いんですよ。
そして不調和な人は、早く調和になって貰えればそれで良い訳ですよ。後は何も望まないですよ。それで良いんじゃないでしょうか。それ以上、何があるでしょうか。
人間というものは、「もっと、もっと」とか、「何かないか、何かないか」と求める。――それは欲望ですよ。
自分の生活、自分の環境をよーくご覧なさい。其々みんな違うんですよ。
「あの人が、こういうものやってるから、私もやりたいわ」と言っても、そうはいかない。やってご覧なさい、出来ないから――。
「あの人、凄く頭良いけど、私も頭が良くなりたい」と、思ってもならない。
「学校を出なければ、何にも出来ない」なんて、そんな事はありませんよ。大学を出ても、字を書けない人が一杯いるじゃない。本当にお粗末ですよね。平仮名は書ける。漢字は全然知らない。字は、それこそ蚯蚓が這ったような字を書く。そういう人が、「先生、字は要らなくなるそうですよ」
「えーっ……」
って吃驚しますよね。字が要らない、漢字も要らない。キーを一寸押したら、片仮名が出て来る。あれでいゝんですって――。
この前、車に乗せて貰って、高速道路を走った。そこの高速道路は、しょっちゅう通るんですね。そうしたら、最近えらいサービスが良くなった訳ですよ。
「有り難う御座いました。料金は一九〇〇円で御座います」
と、えらいサービスがいゝですね。女の人の声だ。声が聴こえるから、何処にいるのか探しても、おじさんしかいない。おじさんは切符を黙ってガチャン――。機械が「有り難う」って言うから、今まで「有り難う」って言ってたおじさんが何も言わなくなった。(笑)やっている人は、何とも思わないんじゃないでしょうかね。受け取ってる方も何とも思わなくなってしまう。
自動販売機もスーパーもそうですね。レジが「有り難う御座いました」と言う。傍にいる人は、だまーって包む。――おかしいんじゃないでしょうか。
こういうものを、もうみんな何とも思わなくなってきてるんですよ。そうでしょう。
みんな其々、家の事情があって、もう女の人が一所懸命に働く。男がだらしがないから女の人が働く。子供は、もう生まれたら直ぐ保育所や保育園。
保育所で赤ちゃんの脳波を調べたら、保母さんといる時と、お母さんと一緒の時と(安心の度合いが)大して変わらない。男の人が来たら(少し緊張して)脳波が変わった。そうだったら、保母さんでも良いんでしょうか? ――良いんですって……。
そうしたら、子供は誰に育てられるのでしょうか? ――これは、本当に子供の産みっぱなしですね。
その子供が大きくなったらどうなるでしょうか? ――心不在ですね。これは後で親は困りますよ。――親じゃない、後で困るのは、子供本人なんですよ。
今度は、働いて忙しいから、買い物なんかしていられない。買い物が出来ないから、持って来て貰う。それで、家でボタンを押したら、今日は鯵が幾ら、キュウリが幾らと全部出て来る訳ですよ。注文したら、全部サーッと配達してくれる。
そして、それを開けて料理をする。鮮度が良いも悪いも関係ないですよ。もう、何でもいゝ訳ですよ。
そうなると、これが良い、あれが良いと選定する事も出来なくなってしまうんですね。そうしたら、話も出来なくなる。人を見て、あの人どうだこうだも無くなってくると思いますよ。
最近では歩かなくてもいい。便利ですね、これは――。しかし、心の方は何処に行ってしまったんでしょう。人と接する――そういうものが全然無い。人に対しての慈しみというものも全然無くなってしまう。
頼めば持って来てくれる。終いに、「誰か来て、ご飯炊いてくれないかな」ってなるんじゃないでしょうか。終いに、口開いて、「ご飯入れてくれ」って言うんじゃないでしょうか。(笑)
もう、人間はそこまで来ているんですよ。恐ろしいですね。
前にも一寸申し上げましたね、大阪の方のマンションの一棟の中を調査してみた。包丁が無い人が三〇%いたそうですよ。三〇%ですよ――。子供がいるんですよ。
どんな事やって食べているんでしょう? ――スーパーに行ったら、みんな小さい袋やトレーに入って売ってる訳ですよ。もう切ってあるし、調理までしてある。弁当もおかずもみんな売ってますよね。食器もそんなに要らないですよ。そのままトレーで出して、食べたら捨てればいい。
「台所は何に使ってるんですか?」
「はい、物を置く処に使ってます」
って言ってましたが、ガクンときますよね。
小学生が鉛筆を削れなくなる。当然ですね。「鉛筆を削ってご覧なさい」と言ったら、鉛筆削り器をガーッとやって、これが鉛筆削り――。「ナイフで削ってみなさい」と言ったら出来ない。
先程言いました、高校生がお釈迦さんを知らないのと、これはもう大した変わりはないですね。
もう人間というものは、物、物、物……。自分さえ、自分さえという人ばかりになってくる。面倒臭い事は人がやってくれると、段々そうなってくる。
私達は今、本当に人間として、いかに生きるべきかという事を考えるべきだと思うんですよ。何も過去の事を、あゝだこうだ言ってもしょうがないですね。未来の事を言ってもしょうがないですよ。今を一所懸命に生きる事が大事だと思うんですね。
それには、自分の心というものを、二回も三回も発見し、そして前進していかなくてはいけないですね。
それが出来て、初めて人間に幸せをもたらすんじゃないかと思うんですね。
自分が困って、人に尋ねても、拝んでも、拝んで貰っても、お経を、「ナムアミダーブー……」とやっても、「ナムミョーホーレンゲーキョー……」とやっても、「カンジーザイ・ボーサツ・ハンニャーハーラーミータージ……」、また、「アーメン」と幾らやっても、その人の苦労は取り除いてくれませんよ。絶対に除いてはくれない。
もし、除いてくれるという人がいたら、それはもう正しいものじゃないですよ。
「あなたは、自分でやりなさい」
――これは、正しいと思うんですよ。
だって自分の事は誰がやってくれますか? ――そうですね。そうしたら、自分にやっぱり厳しいもの――自分というものが、何故この世の中にいるのか、どうしていかなくてはいけないのか――本当はそれをよーく知るべきだと思うんですね。
――次回に続く
次回『27、人間とは何ぞや』の小見出しページ公開予定は、7月の第2週目です。どうぞお楽しみに。
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